3月に出席した学習講演会ですが、下書きのまま忘れていました!(ノ≧ڡ≦)
最近、近づく韓国大統領選の話題を見かけるようになりましたので、今なら出せる的な。
一応、下記のコモンズの記事で最低限の基礎知識はあったのですが、その後の推移を心配していました。韓国の検察改革は徹底的な抵抗の中でもひるまず、なんとか最後まで成し遂げられたということで、とりあえずはよかったと思います。定着するまでまだ安心はできないでしょうが。
「徴用工問題」追及から「植民地支配・日韓条約体制」打倒へ韓国検察庁は裁判所・警察の上に君臨し絶大な権力を持っている。文大統領はこの組織を改革すべく曺国氏を法務大臣に指名すると検察は曺氏には不正の疑いがあるとした。しかしこれは検察によるデマであったことが内部からの告発… 韓国】ろうそく民衆の検察改革は勝利へ前進/村山和弘 -2020年「韓国の民主... - 月刊コモンズ |
〇 ろうそく市民が選んだ文大統領
2016年冬から翌春にかけて、極端な貧富の格差、雇用、低賃金、学費など様々な問題を抱えた市民が、1700万本のろうそくに火を灯した。これは朴槿恵現職大統領を弾劾(罷免)しただけではない。一人ひとりが抱えている、切実な全ての問題は民主的な政府が成立しない限り解決できないとし、最も民主主義的価値に相応する文在寅を大統領に選んだ。
「主権は国民にあり」とひたすら叫んだろうそく市民。
〇 「ろうそく市民の申し子」と自認する文大統領は
国会内外の既得権益層、保守メディアによる抵抗・反撃の中、真の民主主義確立のための新法、改正法を制定。
→検察改革、司法改革、経済民主化…。
〇 文在寅政権VS検察
検察改革はろうそく市民が要求した積弊の清算の本丸。これに対し反撃に出た検察、加担する保守メディア。
邦字新聞は「韓国メディアによると…」という記事を垂れ流す
→信憑性は??
また、対立の背景にある歴史を無視し、非は大統領にあるという論調。読者もまたそのまま信じ、ワイドショーなどの無責任な解説やネット上で更に歪められ、増幅・拡散している。
隣国・韓国で今、本当は何が起きているか?北川さんに分析・解説していただきます。
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以下、当日のレジュメに講演の内容等を個人的に補足したものです。よって文責は草加とします。上の北川さん講演の動画を聞きながらご覧いただくとわかりやすいと思います。
at スペースたんぽぽ 2021.3.30
文在寅政権 VS 伊錫悦検察
ー韓国で今、何が起きているか?ー
講師:北川広和(「日韓分析」編集人)
「日韓分析」の方法/「社説余滴」(2.14 朝日)
→「文政権はリベラルではない」と指摘
「反北朝鮮」かどうか、「親日本(政府)」かどうかだけでしか判断しない。そうでなければ全部ダメみたいな朝日を含む日本マスコミの論調。だが北朝鮮に対しては同じ民族で分断された国家という事情、日本は友好国だがかつて侵略を受けた歴史、そういう複雑な事情をまったく無視して単純化などできないはず。
韓国民衆がキャンドルデモで生み出した文在寅(ムン・ジェイン)政権とは何者なのか?その歴史的位置は?政策は?「反日・親北」というフレーム理解は有効か?日本がとるべき国家戦略はいかにあるべきか?そして韓国でいったい何がおこっているのか?何が変わったのか? 講演】東アジアの平和を!韓国・文在寅(ムン・ジェイン)政権の誕生を受けて/李... - 月刊コモンズ |
・「積弊清算」はロウソク革命民衆の願いであり、文在寅はそれを全面的に受け入れ公約した候補だった。→政治の民主化・金権支配一掃、経済の民主化
・若者が子供を持てない社会(出生率0.8人の少子化)
・文政権で「政経癒着」は絶てたが、財閥そのものは手つかず「経済の民主化」はできていない→サムスンだけで韓国GDPの20%という強大な力をもっている
三無(三放)世代 恋愛・結婚・出産を放棄している若者世代のこと。韓国国内で増大する低賃金かつ不安定なワーキングプアの産物であるとみなされている。就職・マイホームも諦めた五放世代、さらに人間関係・夢の7つを諦めざるを得なくなる七放世代という表現も現れた(wikipedia より)。
※文大統領が「政治の民主化」で第一に公約していたのが検察改革だった
・諸外国のような起訴権(司法)に加えて通常捜査権(警察権力)までもっている
・「国家保安法」によって民主化運動、労働運動を弾圧する強大な権力
→植民地時代の日帝警察は起訴権まで持っており、自由自在に弾圧が可能で警察権が肥大化。もともとは独立後にこれとのバランスをとって警察権を弱めるための措置だった
検察改革の内容=検察の警察権を廃し、諸外国と同じく起訴権のみとして司法に集中させる。権力犯罪については政治的に中立で専任の特捜部(公捜庁)を設置.(検察を絶対権力を持つ恣意的な政治弾圧の機関から、諸外国と同じ通常の行政機関へ)。
韓国の検察は、大統領が退任した時に本人(無理なら親族)の強制捜査を行い、新大統領に「我々の権力に手を出すな」と圧力をかけるのが常→労働・民衆運動に弾圧を行いながら、三権に並ぶ不可侵の「第四の権力」と呼ばれ、韓国の民主主義を歪めてきた存在(最大の政治的積弊)
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(1) 日韓慰安婦合意の問題性
(2) 裁判の判決に「主権免除」と主張する菅政権
(3) 韓国大法院が元徴用工勝訴の判決
(4)菅首相の責務 「韓国と外交せよ」「過去の清算に取り組め」「歴史認識を明らかにせよ」
以上
北川さんの講演は、文在寅政権が行った改革の意義をわかりやすく知ることができて、大変に勉強になりました。ろうそく革命から始まった、市民の力を背景にした改革は、韓国民主主義の前進に重要な役割を果たしました。韓国の民主主義の強さには深い尊敬を禁じ得ません。
しかし、文政権には限界もありました。経済民主化や財閥改革は十分ではなく、低出生率や若者の貧困といった構造的な問題への対応は限定的でした。また、南北関係の進展も、期待されたほどの成果を残したとは言えません。
北川さんは特に検察改革を中心に進歩派の視点からの評価を論じおられますが、一方で注目したいのは、検察改革を支持したのは進歩派だけではなく、一部の保守派からも検察権力の抑制を求めて、改革への支持が広がっていた点です。検察改革は「進歩VS保守」という枠を超えて、韓国社会全体が、より公正で透明な司法制度を求めたという点にも注意が必要だと思います。
韓国で大ヒットした検察を舞台にしたエンターテインメント映画です。コミカルな描写も多く、そんなに重々しい政治性はありませんが、日本ではわかりにくい「検察権力」というものについて、あるいは韓国で検察がどのように見られているかを知るにはいいかもしれません。前提として韓国検察は自由な捜査権(警察権)と起訴権を同時にもつ万能の存在であると知っていると楽しめると思います。
あらすじ(ネタバレあり)はこちら(Mirtomo)
基本的に政治性はありませんが、それでも文大統領と同じく、公約の検察改革に手をつけようとした盧武鉉大統領が、保守マスコミ+保守野党を味方につけた検察に徹底的に潰されるエピソードもでてきます。ちょっと官僚に潰された民主党政権を思い出します。さらに盧武鉉氏は退任して一般人に戻った後も後継政権への見せしめに、検察から周辺親族のスキャンダルを大々的に演出されて、最後は自殺にまで追い込まれるというえげつなさです。
ろうそく革命前まで「検察改革」は進歩派をも含めたすべての政治家や大統領の鬼門だったのです。そこに手をつけただけでも文在寅大統領や曺国法相の勇気は評価されていいと思います。
予想された通りの展開になりましたが、文在寅政権が最後までやりとげた背景には、前回の盧武鉉政権時に支持勢力である進歩派が、早々に盧武鉉大統領を見捨ててスキャンダルに巻き込まれないようにしてしまった、結果まんまと検察権力が温存されたという反省があるのだそうです。
今回はその二の舞はしない。最後まで検察改革を支持するという姿勢で、検察の攻勢と血みどろの抗争の中でも、改革派が割れずに文在寅支持でまとまり続けたという点が、改革成功の最大の原動力になったということのようです。