5月3日、錦糸町の楽天地シネマで彼女と韓国映画『タクシー運転手』を観てきました。
最終日のはずでしたが期間が延長され、10日までは観られるようです。20時20分の最終回をみました。編集の仕事の〆切が心配でしたが、無理しても観に行ってよかった。
これは実話を題材に構成された作品。当時の光州の様子が実にリアルで、あのハードアクション感は本物だと感じさせます。最後のカーチェイスや、その前の検問で逃してやる兵士のシーン等は「こうあってほしい」という観客の願望に応えるフィクションでしょうが、それが作品に痛快さを演出し、娯楽作品としての味を出しています。
作品の中心を貫くテーマは紛れもない本物。特に、主人公のタクシー運転手が、普通の庶民が持つ意識から、躊躇しながらだんだんと変貌をとげて行く姿に我々は感動する。これはあの光州事件を題材としていますが、それを政治的観点から俯瞰して描いているのではなく、市民の目線からとらえています。だから「政治的映画」とは言えない。娯楽映画、あるいはアクション映画でしょうか。ストーリー解説などは他の方に任せますが、何度も泣いてしまう映画です。オススメの作品。観なかったらきっと後悔します。
光州事件は「事件」と形容されますが、そんなもんじゃない。事実上の「光州蜂起」であり「光州コンミューン」でした。独裁者朴正煕(パクチョンヒ)大統領が暗殺されたあとすぐ、全斗煥(チョンドゥファン)によって軍事政権が立つ。それはパクチョンヒよりもひどい独裁政権でした。民衆には民主主義も自由もなかった。だから光州事件は起こるべくして起こった。
民衆は光州の軍の武器庫を襲撃して武器を奪います。そして軍を排除し、光州市を市民兵の支配下に置いた。これが可能だったのは、徴兵制によって韓国人は一定の年齢に達すると入営して軍事訓練を受けるからです。市民はだれでも銃器の扱いに慣れている。しかしやがてチョンドゥファン軍の逆襲により多くの市民が拘束され虐待されます。また多くの人々が殺されていった。
38年前の、あの光州蜂起を知る我々はみんな、この事件と自分の関わりを探す。そうして「自分にとっての光州事件」を理解しようとする。あの映画を観たタクシー運転手さんからの投稿を読みました。その切実な気持ちが伝わってきます。僕にとってもあの事件は意味深いものがあります。
当時結成されたばかりの「アジア青年会議」に所属し、今と同じように印刷物に関わっていた。二つの大きな世界的事件が我々を感動させていた。一つはイランイスラム革命、そしてもうひとつが隣りの国で起きた「光州コミューン」でした。我々の機関誌『闘うアジア』にはこの事件を掲載しました。
あのころ、我々活動家の多くが東アジアの新たな革命の胎動を夢見ていた。あの光州蜂起の中から多くのエピソードが生まれたそうです。タクシー運転手の物語は映画となって韓国では1200万人の観客を動員した。闘いの中で死んでいった若い二人の悲しい恋の物語は「イムのための行進曲」となって人々に歌い継がれている。
そして今、韓国はかつての「銃による革命」から「キャンドルによる革命」へと転進し、大きく前進しています。反動的大統領を民衆の実力によって打倒し、国内での民主化を推進するだけでは終わらず、こんどは南北接近に向かい、朝鮮半島全体に影響を与えようとしている。新しい革命がいま、歴史的転換を主導しようとしています。
この映画でもそれがさりげなく描かれています。時が過ぎてマンソプが乗せた最後のお客が「光化門へ」と指示していることです。光化門広場こそキャンドル革命がはじまった場所でした。この事態に注目していきましょう。そして「次はわれわれの番」だ!
(2018.5.4 まっぺん)
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