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菅孝行著『天皇制と闘うとはどういうことか』(航思社)合評会/神田

ルネサンス研究所 7月定例研究会

  • 日 時:2019年7月9日(火)開場18:15~21:00
       (18:15まで授業が入っています)
  • 会 場:専修大学神田校舎7号館7階772教室
  • 参加費:¥500
  • 報告者:前田年昭(組版校正者 元『悍』編集人)「日帝自立論再考」
        塩野谷恭輔(宗教学・東京大学大学院)
  • 主催:ルネサンス研究所

 ルネサンス研究所の運営委員のひとり、菅孝行の新著が刊行されました。『天皇制と闘うとはどういうことか』(航思社)です。今回の定例研究会は、この本の合評会を行ないます。
 本書は「平成」から「令和」へと代替わりした象徴天皇制の支配構造を分析しながら、日本国家と日本社会の現在を厳しく批判するものです。安倍政治、天皇(当時)明仁の「8・8メッセージ」、沖縄の辺野古基地建設の強行、賤民文化と天皇制、これからの社会変革を展望する〈組織戦〉あるいは〈陣地戦〉の方向性など多岐に渡る論点が提示されています。
 そこで、ルネサンス研究所の内外で菅孝行の本書に触発された評者をふたり立てて合評会形式の討論会を持ちたいと思います。皆さんのご参加を呼びかけます。

報告者の問題意識

(1)前田年昭

 菅孝行さんの提起を、私は、反権力の闘いを狭義の政治システムへの抵抗としてしか捉えてこなかった戦後左翼運動に対する総括と反省と受けとめ、共感しています。
 今回の報告では、戦後の帝国主義をめぐる競争と対立の関係が、必ずしも戦争による再々分割へと向かわず、帝国主義同士の自発的な「提携」関係をとっていることを、日本帝国主義の分析を通じて裏づけ、考えたいと思います。この問題についてはすでに、60年代から提起と論議があったにもかかわらず、その後、深められて来なかったのが現状です。
 なぜ論議を深めることができなかったのか。日本帝国主義の経済的な自立、アジアへの経済侵略に対しては、分析と批判がありましたが、そもそもレーニンの『帝国主義論』を読み誤ってきたのではなかったか――以上が、問題提起の骨子であり、いわば「日帝『自立』論」の呪縛を解くことがねらいです。

(2)塩野谷恭輔

 天皇代替わりから早2ヶ月が経過したが、皇位継承に関連した神道儀式は当面のあいだ続き、大手メディアもいまだに改元気分から抜けきらない。「八・八メッセージ」が天皇制の行く末についての論議を、結果的にとはいえ惹起したのは事実であり、それは戦後民主主義者として知られる某批評家をして、天皇制廃止を提案せしめるほどのものではあった。
 しかし、いざ代替わりが終わってみると、こうした議論は「なかったこと」にされてしまっているのではないか。安倍自民党政権は、東京五輪・大阪万博を見据え、改憲(9条自衛隊明記ほか、天皇の元首化も含む)を着実に日程に上げている。政権にとって懸念事項であった明仁の退位も無事に(?)終え、天皇制についてもすでに熟議が尽くされた「かのように」。
 だが真の問題は、かかる雰囲気が国民一般にも共有されている点だろう。天皇制論議は「改元気分に水を差す」のである。菅孝行氏の議論の特色は、天皇制の基盤にほかならないかかる“国民”の心性の解体と、反資本-反権力の〈陣地〉闘争とを結び付け、実際の運動モデルを提起している点にある。本報告では、菅氏の観点の新しさを読み解いていきたい。