9・11とは、日本がかつて夢見た、奇妙な悪夢だったのか
かつて天皇コラージュ作品で日本のタブーを揺るがせた異端の美術家・大浦信行監督が、5年の歳月をかけて完成させた神話的ロードムービー。
現代日本のありようを、2001年9月11日に起きた米国同時多発テロとの関連で見つめ直し、ドキュメンタリーと象徴的な映像の融合による新しい表現によって、出演者たちの魂の旅を浮かび上がらせた、ラディカルなイマジネーションドキュメンタリー映画です。
モントリオール世界映画祭正式招待作品
前 作:「日本心中」 第一部
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あの時わたしたちは、死ななければならなかったのだろうか
自ら戦争を体験し、生涯を賭け「戦争とは何か」と自問し続けてきた針生一郎と重信メイの二人。
2001年1月、老美術批評家、針生一郎は、残り少ない己の人生をかけ、最後の旅に出た。 批評家として闘ってきた敗戦後日本の状況を、痛みとともにもう一度たどり直すべく、かつての盟友や、若い思想家たちを訪ね歩く旅が続く。
同じ頃、1973年にパレスチナで生まれた重信メイも旅を始めていた。メイの母親は、かつて世界を震撼させた日本赤軍のリーダー・重信房子。父はパレスチナ民族解放運動の闘士だったが、闘争の渦中で暗殺された。彼女は生まれ育ったレバノンを離れ、母の国、日本にやって来た。そして、アラブと日本に引き裂かれた自己のアイデンティティを探す旅を開始したのだった。
やがて2人の旅の途中、2001年9月11日、アメリカ同時多発テロが発生した。9.11を契機にして、彼らの旅が加速していく。2001年9月11日のニューヨークの青空と、1945年8月15日、日本無条件降伏の日に日本が体験した青空の奇妙に似通った光景が、彼らを遠く隔たった時空の間に横たわる闇に、奇妙な白昼夢とともに迷い込ませる。
針生は美術評論家として、藤田嗣治の戦争画から戦場での人間の本質を、山下菊二のシュールレアリスム作品から戦争によって解体し、あるいはヒトならざるモノへと変貌してしまった人間性を読み解いていく。戦争が人間に与えた精神的な痛みを、美術作品からくみ取っていく切り口は新鮮だ。
映画は2人の精神的・思想的旅路のスケッチの間に、たくさんのイメージと哲学的な言葉、あるいは詩をタペストリーのように織り込み、重層的に展開していく。彼らが時空を超えた懐かしい出会いを果たした時、彼らの発する闇からの光が、現代日本、そして世界の姿をゆっくりと浮かび上がらせてゆく。そこに見えてくるものは、希望だろうか、絶望だろうか…。
キャスト
針生一郎・重信メイ・鵜飼哲・椹木野衣・島倉二千六・岡部心理恵・大野一雄・鶴見俊輔・金芝河・中山真利絵・武藤光司・中村江位子
スタッフ
監督・脚本・編集:大浦信行、撮影・編集:辻智彦、録音:川嶋一義、整音:吉田一明、音楽録音:寺田伊織(Rinky Dink Studio)、音楽:朴根鐘、演奏:李明姫・李東信
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