野宿労働者への襲撃事件に思う-大阪の小中学校で野宿者を招いて特別授業

教材用DVD「『ホームレス』と出会う子供たち」
DVD「『ホームレス』と出会う子供たち」(詳細

 とてもお世話になっている(との一言ではすませられないくらいに)鈴木加代子さんの御夫君、三里塚農民の鈴木謙太郎さんが急逝されたことがショックで、仕事中もぼっとしている。本当はそちらを先に書きたいんだけど、どう書いていいのかわからない。
 急ぎの呼びかけがあったので、そちらを先に書くことにした。

小中学生による「ホームレス襲撃事件」

 山谷労働者福祉会館のブログで知ったが、東京の江東区で昨年の12月11日、公園で野宿していた労働者が深夜子供たちから暴行を受け、肋骨を折る重傷を負うという重大な事件が発生した。犯人の子供たちは年長でも中学生で、小学生まで襲撃犯にまじっていたというから恐ろしい

[スポンサーリンク]

 野宿労働者(ホームレス)への子供たちによる痛ましい襲撃事件はいまだに後をたたない。石をぶつけられて怪我をしたり、襲撃者に金を盗られたなど、表ざたにならない大小の事件が毎日のように発生しており、野宿労働者たちは貧困からの生活苦に加えて、このような心無い陰惨な襲撃に怯えなくてはならない毎日だ。

 それが殺人・放火のような、新聞に載る大きな事件に発展するたびに、非政治系の一般的なサイトでも「こんな悪ガキどもは……」といった感想が載るし、怒りや憂慮の投稿が、あちこちの掲示板やニュースサイトやSNSの日記などにアップされる。

 それはごく普通の反応だろうと思う。だが子供たちだけに責任をかぶせて終わりにはできない。こんな大事になる前に、大人たちにはもっと打つべき手はなかったのか?と考え込んでしまう。

大人や行政の態度と襲撃事件には明白な因果関係がある

 大阪の野宿労働者の場合、行政が特に追い出しなどをしていない公園では、野宿者と周辺住民の関係は、ごく普通の近隣関係と何ら変わらず、むしろ交流なども生まれて良好である。ところが、行政が追い出し、テント撤去などを実施し、「警告」などの張り紙や隔離フェンスなどを設置している公園では、周辺住民との交流も生まれないばかりか、日常的に少年による投石などの襲撃事件が頻発するようになるのだという。

 野宿者をリンチ殺人で死に至らしめた少年の父親は、日常的に野宿者に対する差別や偏見を口にする人物であったとも報じられている。大人たちの野宿労働者に対する差別、無知からくる偏見、子供たちは単にそれを反映しているだけではないのか。大人の心にあるケダモノが、私たちの大切な宝物である子供たちを、本物のケダモノに変えてしまっているのだ。全く同じことは野宿労働者だけでなく、韓国・朝鮮などをはじめとする在日市民への差別デマや襲撃事件に対しても同じことが言える。

大阪の小中学校で野宿労働者を招いて特別授業

野宿当事者を招いた中学校での特別授業
路上生活者を招いて中学生が話を聞いた

 貧困で住む所を奪われた人たちも、地震で家を奪われた人たちも、本質的には同じである。そこで野宿者に対する無知からくる偏見を除くため、子供たちによる野宿者へのリンチ殺人が発生した大阪では、野宿者自身を小中学校に招いて、子供たちに「野宿者とはどういう人なのか、どんな人が野宿者になるのか」を知ってもらう特別授業などの取り組みが実施された(→参照「子どもたちにホームレスが特別授業」、他、当エントリ巻末にリンク集)。

 結局、野宿労働者と言っても普通の人であり、いわゆる「いい人」もいればそうでない人もいる。それは自分のお父さんや、隣の家のおじさんと何も変わらない。野宿者になったのもたまたまで、誰でもそうなる可能性がある。そのことを知ってしまえば、もう差別もましてや襲撃などできなくなってしまう。野宿者を襲撃するのは、隣の家のおじさんを襲撃するのと何も変わらない「悪いこと」なのだという、当たり前のことがわかる。

差別偏見は必ず発生する-その放置が許されない

 子供たちが(実は大人も)野宿者や在日市民のコミュニティなど、自分の知らないものに、漠然とした不安や恐れを持つのはある意味で当然だし責められない。だが、子供をそのままの状態に置いておくことは大人や行政や教育の責任放棄として責められるべきである

 問題はその漠然とした不安の心に、野宿者への偏見と差別を植えつけるのか、それともただ境遇が違うだけで(それが重大な社会問題ではあるのだが)自分たちと何も変わらない人権享有主体なのだという真実を教えてあげられるかだ。「悪ガキども」と特定の子供を責めて個人の問題にする前に、大人が反省し、取り組むべきことはいくらでもある。

 まずは行政の担当者の意識改革からだ↓

江東区は排除をしないという約束を守れ

12月21日 江東区襲撃問題についての話し合い報告

※以下「山谷ブログ」記事より構成(文責:草加)

子供の野宿者襲撃を報じる新聞

 少年による野宿者襲撃。無防備で無抵抗な人間に対し、「ストレス解消」「ゲーム感覚」で暴行を加える行為は、卑劣で恐ろしいものです。また、野宿者に対する偏見、差別意識が浮き彫りとなっていると言えます。

 江東区内では、そのような野宿者襲撃が他区に比べても多発しています。12月11日には、大島小松川公園で野宿する男性が深夜、小中学生により暴行を受け、肋骨を折る重傷を負う事件が起きました。このような事件を二度と起こさないようにするためには、野宿者及び野宿を生み出す社会的背景に対する正しい理解が必要です。

 しかしこの日(12月21日)、11日の事件を受けての話し合いの場で、江東区水辺と緑の課、人権推進課、教育委員会の三者は驚くべき回答を行いました.。

質問:「これまで野宿者襲撃問題にどんな対応を行って来たのか」
水辺と緑の課:「野宿者が公園内で酒を飲んだり、排泄行為をするという区民からの苦情がある。また、暴力をふるったという匿名の情報がある。区民が不安に思いテントを撤去してほしいという要望がある。これに対しては、テントをゼロにしますと答えている。」

質問:「江東区のホームページで区民の意見と区の回答として『区役所にホームレスがいて、臭く不快だ』→『外へ退去も含め対応する』といった、極めて差別的な問答が公開されていることについて」
人権推進課:「これが差別を助長するかどうか判断できない」

人権推進課:「昨年ホームレス問題の講演会を行って人権啓発活動をしている。」
質問:「昨年度江東区内の襲撃の事例について被害者から聞き取りをしたリストを渡したが引き継がれているか?」
人権推進課:「記録にない。」
質問:「リストはどうなったのか?」
人権推進課:「わからない。」

教育委員会:「改めて今後も人権教育を徹底していきたい。来年度ホームレス問題を取り上げた教員研修を行う。」
質問:「前回11月16日の話し合いで、警察ざたにならなければ襲撃の事実を認められないと言った。大怪我をしてからでは遅い。被害者からの報告では事実認定しないのか?」
教育委員会:「学校か警察からの報告でないと事実として認められない。」

質問:「追い出し問題について」
水辺と緑の課:「追い出しではない。移動をお願いしているだけ。」
人権推進課:「所管のほうで法に則ってやっていると聞いている。」
質問:「法とは?」
人権推進課:「都市公園法」
質問:「強制立ち退きを禁じる国際人権規約に照らしては?」
人権推進課:「……」
質問:「水辺と緑の課長がヤクザまがいの脅しをして野宿者を移動させた経緯は知っているのか?」
人権推進課:「説明をやったというふうに聞いています。」
質問:「深夜ガードマンを巡回させてベンチで寝ている人を起こして『ここは寝る場所じゃない。』とやっていることについてはどうなのか?それを見た子どもはどう思うのか?」
水辺と緑の課:「以後注意します。」

痛ましい事件を繰り返しながら、差別意識を植え付ける水辺と緑の課
「人権課題である」といいながら差別構造を放置する人権推進課と教育委員会。
江東区の人権意識はどうなっているのか。

江東区に野宿労働者への 強制排除を止めるようメール・FAXの集中を!

※以下「山谷ブログ」より

 6年以上にわたり、公園改修工事計画について、野宿する人々と区との間で話し合いが行われてきた江東区竪川河川敷公園で、野宿の小屋を強制的に排除する手続きがはじまっています。

 「追い出しは行わない」と繰り返し言ってきた江東区水辺と緑の課ですが、昨年秋から話し合いの道を放棄し暴力的な追い出し路線へシフト。年末の12月22日には「弁明機会付与通知」という書類を、野宿する16件の仲間の小屋に配りました。年明けの1月5日に私たちは弁明書を提出し、現在、この弁明書を考慮しつつ、江東区が「除却命令」を出すかどうか、区内で検討が行われている段階です。1月5日、江東区職員は、このまま除却命令→戒告書→代執行令書通知→行政代執行、と強制排除へ向かって手続きが進む可能性を示唆しました。

 いま、”除却命令”が発行されるかどうかが大きな焦点になっています。もしこの命令が出されると、水辺と緑の課を越えて、江東区が区として正式に話し合い路線を放棄し、暴力的な野宿者追い出しを行いつつ公園工事を行うことの宣言となります。江東区、そして竪川河川敷公園の野宿の仲間は大きな岐路に立っています。除却命令が出されるかどうかで、もっとも貧しい人々のこれからの生活が大きく左右されることになります。心を寄せてくださる皆さんに訴えます。江東区に対し、除却命令を出さないよう皆さんの声を集中してください。

 以下、江東区水辺と緑の課(野宿者追い出し担当課)と区長のFaxとメールです。どうぞよろしくお願いいたします。

◎江東区水辺と緑の課
電話:03-3647-2089、FAX:03-3647-9287
メール(江東区のホームページから送信)
◎江東区長
FAX:03-3647-4133、
メール(江東区のホームページから送信)

追記)1月12日、ついに除却命令が出されたそうです。抗議の声を!
http://san-ya.at.webry.info/201201/article_10.html

野宿者強制排除と襲撃を許さない江東区デモへ

http://san-ya.at.webry.info/201201/article_6.html

野宿者強制排除と襲撃を許さない江東区デモへ

 12月22日に「弁明機会付与通知」が出され、行政代執行による強制排除の危機にさらされている竪川河川敷公園ですが、1月5日に提出した弁明書や、多くの皆様からの抗議の声を無視するかのように、1月12日、除却命令が出されました。除却期限は1月18日午後5時までとされています。江東区は行政代執行へ向け、さらに一歩コマを進めたことになります。

 野宿の仲間たちを厳寒の路上に叩き出し、人々が生きる手段を強制的に奪う行政代執行をさせないために、多くの皆様の力を結集してください。野宿者強制排除と襲撃を許さない江東デモにご参集ください。江東区へ抗議の声を寄せて下さい。

★2012年1月22日(日曜日) 11時~

★文泉公園 集合
 東京都 江東区 亀戸二丁目 4-3(亀戸駅から徒歩5分)
 地図:http://www.telmap.net/map/111198

「ホームレス」問題の特別授業リンク集

教材用DVD“「ホームレス」と出会う子どもたち”

「なぜ道ばたや公園で寝ているの?」「ホームレスの人たちは、なまけているの?」・・・「ホームレス」の存在を知った子どもたちが抱く疑問に、真正面から答える「教材用DVD」ができました。
「ホームレス」への偏見・差別をなくし、全国で多発する子どもたちによる「ホームレスいじめ・襲撃」という「最悪の出会い」を、希望ある「人と人としての出会い」へと転換していくために、全国の学校でこの映像を使った授業が取りくまれることを切に願います。(社団法人 ホームレス問題の授業づくり全国ネット)

子どもたちにホームレスが特別授業(ブログ旗旗)
一般社団法人 ホームレス問題の授業づくり全国ネット
野宿・貧困問題の授業を行なっています
特集「ホームレス」襲撃事件は子どもたちの“いじめの連鎖”(公益財団法人 東京都人権啓発センター)
ホームレス問題の授業作り(ソウル・ヨガ(イダヒロユキ))

学活の時間における「野宿者人権学習」指導案〔中学校編〕
道徳の時間における「野宿者人権学習」指導案〔中学校編〕

学校で野宿問題の授業を―「極限の貧困」問題と教育の課題(「世界」2008年4月号)
アルミ缶の値が急落、続く襲撃事件…ホームレス問題の授業づくりセミナー(「夕刊フジ」2008年12月3日)
ホームレス『なぜなった?』『なぜ襲撃?』教員らの『全国ネット』がセミナー(「東京新聞」2008年12月11日)
ホームレスも同じ人間「偏見なくせ」きょう授業セミナー(「産経新聞」2008年11月24日)

Other Posts こんな記事もあります(一部広告)。

教材用DVD「『ホームレス』と出会う子供たち」

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です